もくじ
バルト三国と台湾の関係強化
2022年2月24日から始まったウクライナへの露の軍事侵攻は今、日本人の一番の関心ごとになっている。(コロナ騒ぎはどこかへ吹き飛んだようだ)
多くの日本人は次は露が北から攻めてきて北海道を取るのでは❗️という恐れがある。アメリカの強い要請もあり、ウクライナに多大な軍事支援をすることで戦争に加担することになった日本は露から見たら敵国だ。今更敵国認定されて焦っているが、それだけのことをしたのだ。日本は自分で駒を進める選択肢がなかったとはいえ、完全に打つ手を誤った様に見える。
私は露もそうだが、チャイナが気になる。世界が一番注視すべきは変わらずチャイナの動きだ。今回の侵攻とそれに伴う世界の制裁の動きで一番あってはならないことが起こった。中露の関係の強化だ。
この軍事侵攻が起こった直後から、分かっている人達の注目はすぐに台湾に向かっていた。
さてその台湾だが、2021年の11月に「駐リトアニア台湾代表処」を設置し、業務を始めている。外交関係のない国に出先機関を設置するのは極めて異例なことで、これにチャイナは猛反発した。
また同月末には、EU議員団、アメリカ議員団に続き、エストニア・ラトビア・リストニアで構成されるバルト三国の議員団が台湾を訪問し、蔡英文総統と面会もしている。特にリトアニアは2022年初頭に台湾に代表機関を設置することになっており、両国がパートナー関係を強化しようとしていることは明らかだ。
こうした台湾の各国との動きにチャイナは非常に敏感になっている。事ある度に人民解放軍が台湾海峡周辺をパトロールしたり、台湾の防空圏に侵入していることからも分かる。
チャイナは台湾を中国の領土の一部とする「One China」と唱える一方、台湾は自分たちは独立国家であると主張している。
それまではONE CHINAで何となくきていた台湾が、2016年に誕生した蔡英文政権でチャイナが主張する「One China」を認めない考えを表明したことで二国の関係が一転した。
中国の内戦はまだ続いている?
少し台湾の歴史のおさらいをしておこう。チャイナ本土が明から清に移ろうとしていた頃、台湾を統治していたオランダ軍との戦いに勝利し台湾全島を統治したのは鄭成功という人物だった(父親はチャイニーズで母親が日本人)。鄭政権が退いた後は、清が長く統治していたが、1894年の日清戦争で日本に敗れたことから台湾は日本の統治下に入った。しかし、第2次世界大戦後、再び台湾はチャイナの管理下に置かれた。
当時、チャイナ本土では毛沢東率いる共産党と、蒋介石率いる国民党で内戦が勃発していた。内戦に敗れた蒋介石は国民党軍を率いて、政権を台湾に移し、自らが台湾の初代総統になった。
そこから戒厳令を施行するが、1972年に台湾の民主化運動 (美麗島事件(高雄事件))が起こった。1986年には、民主主義と自由を求める活動者によって「民主進歩党(民進党)」が結成され、1987年に戒厳令は解除。
この流れで今の台湾は民主主義国家であり、大陸チャイナとは国際的にも別国とされているのに関わらず、公式には独立となっていない複雑な状況にある。
世界一になるためにまず裏庭の勢力排除
チャイナが台湾を取りたい理由はもちろん勢力圏の拡大だ。
現在、GDP世界2位の中国は、1位のアメリカにかなり迫って来ている。歴史的にも大国が更に大きくなろうとす場合には、自分の周辺国の影響力を排除する。これはまさに19世紀末から20世紀初頭のアメリカがやったことだった。
アメリカがイギリスから独立して半世紀ほど経ち、さらに展開しこうとしていた当初のアメリカはまだ東部の13州しかなかった。
そこで1823年、アメリカの第5代大統領のモンローは「モンロー宣言」を出して、ヨーロッパ諸国はアメリカに干渉しない代わりに、アメリカもヨーロッパに干渉しないことにした。
当時、東部13州はアメリカの領土だったとはいえ、北はイギリス、南はスペイン、フランス、さらに南に行くと、またイギリスという様に周りには他国の勢力だらけだった。つまり、モンロー大統領は
「これから周りの外国の影響力をすべて排除していく」
と宣言したに等しい。
特にアメリカが気にかけていたのがカリブ海だった。そのあたりの外国の勢力を排除することで、南に抜けて、西に回り、カリフォルニアからハワイ→フィリピンへと出ていくことができるからだ。モンロー宣言からたったの70年弱の1890年にアメリカは南北統一という形でNO.1の大国にのし上がった。
中国に地域ナンバーワンのチャンスが到来
このかつてのアメリカがやったのと同じことを今まさにチャイナはやろうとしている。周辺の海を見ると黄海や東シナ海があり、さらに南にいくと台湾があり、南シナ海がある。彼らは南シナ海のナトゥナ諸島まで、チャイナの海として含めようしている。これはアメリカがパナマ運河まで勢力を伸ばそうとしていた構図とまったく同じだ。
以前のチャイナは陸地の民族同士の争いの混乱で、海に出ていく余裕はなかった。90年代の江沢民時代に国境を画定することになったのだが、14カ国接する国のうち、まずロシアと国境を画定させた。ベトナムとは激しい国境争いの歴史があったが、ほとんど画定できた。そうすると余裕ができてきたのだ。
そして2000年代に入っていよいよ海外展開というところで、2001年、海南島付近の南シナ海上空でアメリカとチャイナの軍用機が衝突する「海南島事件」が起こり、米中関係は一触即発状態になった。しかし直後にアメリカはテロとの戦争が始まってしまった為、チャイナを押さえる手をある程度やめた。
そうするとチャイナはチャンス到来とばかりに、軍事力をどんどん伸ばしてきた。本格的に世界帝国となるための踏み台として東シナ海、南シナ海のすべての国を支配下に置く狙いだ。
その野望を叶えるための最大の問題が台湾だった。「祖国統一」というイデオロギーを掲げて台湾を取るというのは、チャイナ共産党からすると外せない現実だ。
アメリカが中国に勝てる見込みはなし
地政学ではユーラシア大陸にある大陸国家をランドパワー、国境の多くを海に囲まれた海洋国家をシーパワーと捉えて、歴史上は大きな力を持ったランドパワーの国がさらなるパワーを求めて海洋に進出して、シーパワーの国と衝突するといったことを繰り返してきた。
現在、ランドパワーを持ったチャイナが海に出て行くことでシーパワーの台湾や日本とぶつかっている状況だ。
問題は台湾有事があるのかどうかだ。これに関してはアメリカで既に未来戦記が2021年に出てベストセラーになったことは以前の記事 (「米中核戦争⁉️元海軍大将の小説が話題に❗️」)でご紹介したことがある。早くも日本語版が出た様なので興味のある人は読んでほしい。
実際に研究されているシミュレーション
実際に、ロードアイランド州にある海軍大学では台湾有事が起こったらどうなるのかと図上演習(シミュレーション)を行っているが、今のところでは、20回中アメリカ軍が全敗という結果も出ている。
実際、チャイナが台湾に軍事侵攻する事態が起こったら日本もひとごとでない。安倍元総理が「台湾有事は日本有事でもある。」と発言した時に、チャイナメディアがここぞとばかり罵詈雑言で持って安倍氏を非難していたが図星だからだ。
もし実際に侵攻するとしたら、最短距離である台湾海峡を渡って直接侵攻することは考えにくいので、尖閣諸島、石垣島や宮古島を回ってくることになるだろう。そうするとチャイナはこれらの島々が邪魔になるので、米軍や自衛隊の動きを封じ込めるなどの動きをするだろうと専門家には言われている。
日本は今回の露の軍事侵攻を受けての政府の対応で、あろうことか3正面作戦という最悪の状態になってしまった。日本の保守の多くは「困った時はアメリカが助けてくれる」といまだにおとぎばなしのような希望を持っているようだが、それはないと断言できる。
日本では今こそ自衛の話が活発にでていないとおかしい。(なぜ、でない、、、)
以前の記事(「ロシアの軍事侵攻から見えてきたこと(第三弾:結論)」)でも指摘したが、核シェアでは日本は守れない。
戦争をしないと誓った憲法がある日本ができることを最大限に活かすべき時だ。つまり、いかに戦争を起こさせないかという攻められないための防衛だ。
日本はウクライナがかわいそうだなんて言っている暇は全くない。積極的に防衛の議論をしてくれる政治家が今、日本の最も必要とされている。(どこにいる?)
【今回は『次のウクライナになるのはどこだ?』について語っていきました。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
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新字体・現代仮名遣い版 世紀の遺書 愛しき人へ/ハ-ト出版/巣鴨遺書編纂会